アフリカ諸国の教育改善! 子どもたちのメタ認知スキル向上を目指して
こんにちは、鳴門教育大学グローバル教育コースの日下智志と申します。算数・数学教育における「メタ認知」をテーマにした研究をしている研究者です。特に日本とアフリカ諸国をフィールドとして研究しています。私の研究室には世界各国からの留学生を含む17名の修士課程の学生がおり、それぞれが自国の教育課題に関する様々な研究に取り組んでおります。
▼プロジェクトを立ち上げたきっかけ
日下は、これまで20年近くJICAの教育プロジェクトに携わり、アフリカ諸国の国々の教育開発、特に算数・数学教育の改善に取り組んできました。授業、教科書、カリキュラム、評価など様々な視点からアプローチをしてきましたが、現状がなかなか改善されない状況があります。小学校1年生からチョーク&トークや教師中心で知識伝達型の授業が行われており、それらを改善するために、自動中心型学習、コンピテンシーベース、プロジェクト学習、Hands on Minds onなど教授に関する様々な用語が出てきましたが、結局のところ、ただスローガン的に使われており、それらの本質を理解して取り組んでいるとはいいがたい状況です。
では、それらの用語が意味するものは何なのかについて、日本およびアフリカ諸国の授業を観察しながら思考を巡らしていたところ、決定的に欠けていることは、子ども達が自分の知識や経験をフル活用して自分で考えて問題を解くことです。つまり、メタ認知を活用しながら問題解決に取り組む時間です。子ども達のメタ認知スキルを向上させることにより、学習改善をはかることができるのではないかという仮説を持ちました。
メタ認知とは、「自分の認知的な活動を客観的にとらえる、つまり、自らの認知(考える・感じる・記憶する・判断するなど)を認知すること」です。自己認識力と言い換えることもでき、それを実践できる能力をメタ認知能力といいます。例えば、文章問題を解くとき、「これまでのどの知識が使えるかな?」、「この問題は以前解いたことあるぞ。」、「もっと早くできる方法はないかな?」、「ここが間違っているかもしれない。」など様々なことを考えながら問題を解きます。これらはすべてメタ認知スキルです。
多くの教師は、授業中に、先述のような発問を行い、子ども達のメタ認知スキルを刺激する問いかけを行っています。また、メタ認知スキルは指導によって伸ばすことができ、メタ認知スキルの高い児童は算数・数学の能力が高いという研究報告もなされています。ただし、それらの報告はすべて先進諸国のものであり、アフリカ等の開発途上国では、子ども達の持っているメタ認知スキルの現状やメタ認知能力向上に係る取り組みについて明らかになっておりません。さらに、メタ認知スキルの学校教育での実践に関する科学的な研究は先進国・途上国を問わずまだまだ途上にあります。研究を蓄積していくことを通して、実践の効果やそのメカニズムを明らかにしていくことは、アフリカ諸国及び日本の教育の発展に非常に役立つと考えています。
▼プロジェクトの内容、ビジョン
アフリカ諸国、特にルワンダの小学生のメタ認知スキルに関する現状を調査します。パイロット校であるFawe Girls’ Gahini 中学校において教員にメタ認知スキル向上プロジェクトを実施し、学校としてメタ認知スキルの向上に取り組んでいきます。そして、その成果を学会や研究会で発表し論文および報告書として公表していきます。
ただ、研究を進めていくうえでは、フィールド調査の渡航費、研究成果を発表する学会参加旅費、研究参加者への謝礼、英文校閲費、論文出版費など、様々な面で資金が不可欠です。継続的な研究資金がなくては研究を続けていくことはできません。
本プロジェクトに応援を頂ければ、研究室一同、今後も質の高い調査研究を続け、アフリカ諸国の子ども達のメタ認知スキルの実態解明、向上に関する教授的な提案を行い、それぞれの子どもがよりよく生きていける力を学校教育で身に着け伸ばしていくという夢に向けて精一杯努力していきます!
皆さまのご支援に心より感謝申し上げます。